1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
アート「おい、いつも8階には若い人達が多いなあ、何でかなぁ。」その言葉を聞いて急いで8階に上がって見ると、確かに、二、三人連れの女性達が何組みも館内を歩き回っている。が、イベントに参加する風でもない。 ジッと眺めていると彼女達は8階に設置した数点の絵画を鑑賞しているのである。 私は嬉しい気持ちになり、少しばかり胸を張った。一週間連続で十人の作家に面会したことや東京芸大の学長室に澄川先生をお訪ねしたことなど、半年前から絵画や彫刻を始めとしたアート選定作業に着手した日々が想い起こされたからである。 「海峡メッセ下関」の利用促進策は建設当初から私共にとって大きな課題で、どれだけ多くの施設を使って頂けるか、いかに多くの市民に来館して頂けるか、が問題だった。 建設準備の段階から時間をかけ様々な利用促進方策を検討したが、その中で、関係者間での共通認識は、建物そのものが多様な機能を備え、他地域の同類施設との競争力と他に無い独自の魅力を誇ることが最も必要であるという点だった。このことは前回触れたつもりである。 私達の次の関心事は、建物に“ある種の付加価値”を添えることだった。例えば、イベント実施には直接関係の無い付帯的な施設やイメージアップに力を注ぐことも必要で、ビル内の和室や交流広場の野外映画上映装置の設置、控室のグレードアップなど、魅力的な施設づくりを試みた。 またソフト面では、建物全体に“文化的な薫り”を醸し出すことを心がけた。シンボルマーク&ロゴタイプ、各種インテリアの選定に注力したが、特に今回ひそかに挑戦したのはアートの収蔵だった。市民に親しんでいただくために海峡メッセの一角を“ギャラリー”にしたいと考えたのである。 しかし、このような目的に使える予算は限られている。欧米では「建築費の1%を絵画収蔵や芸術作品設置等の文化事業に充てる」ことが常識化しているが、我が国では、ハードには理解があっても文化芸術面にはあまり充分な予算が充てられないのが現状である。山口県でも例外ではなかった。 しかし、そんな中でも何とか予算確保の見通しが出てきたので、2月頃から、私達は、県立美術館の方や著名なデザイナーに相談して作品の選定に着手した。 恐らくこのような試みは県内の公共施設としては初めてであろう。随分な冒険だということは分かっていたが、結果的には、関係者のご理解が得られて、県内の若手作家を中心とした国内外14人の作品群の設置が実現できた。オープン前日まで悩みの絶えないアートの設置だったが、冒頭のような光景を目のあたりにして本当に安心した。 しかし、今後も引き続き利用促進が課題である。そのためには、ハードの維持管理ばかりでなくソフト面にも配慮したメンテナンスに力を注がなければならないと思っている。 1996/09/01 |
|