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選択的市民のすすめ“増える海外移住、専門家「人口減を加速」 背景に日本の 閉塞感”、これは2023年2月1日の朝日新聞の記事のヘッドラインです。地域の住民が自分が住むところを選ぶ、そんな時代にやっとなった様です。住民から“棄てられる”自治体もある、という事ですね。 基礎自治体にとっては、これが重大かつ危機的な問題の筈ですから、まだ間に合う対策を緊急に、重点的に、計画的に、地域挙げて実行する事が求められます。 この記事を読んで、私が30年前に地元新聞に書いた次のエッセイ「選択的市民のすすめ」を想い出したので、再掲します。 《選択的市民のすすめ》 (1993/05/25 記) 先日、開催された「わかこんシンポジウム」に参加し、感じたことを述べます。 かわいい子には旅をさせろ、と言います。『遊学』という言葉もあります。 世の親なら誰しも自分の子供には、将来のため「広く世の中を見ておいで」と言います。『井の中の蛙』になってもいい、と考えている親など一人もいないでしょう。 子供達は、修学旅行を始め多くの機会に市外に出ていきます。その典型は高校生活を終えたときでしょう。彼らは就職や就学のために地域外に出ていき、仕事や学業を通じて、多くの体験をし、様々なことを学びます。そして一回りも二回りも成長して社会人として大きく育っていきます。その結果、何年か後に自分の育った故里の宇部を自分の目で評価することが出来るのです。ある人は遠くから想いながら故里の発展を望み、ある人は宇部に帰ってきて自らが率先して地域づくりに貢献します。これらの行動はすべて宇部を自分の判断で相対的に評価できて初めて可能になるのではないでしょうか?他の地域を知り、その特徴を知ってこそ宇部の特質や良さも分かるのではないでしょうか?だとすれば、宇部の若者に「宇部を出ないようにしてくれ」と一概に働き掛けることも考え直さなければならないのでは?いや、自分の子供に対して、そう言えますか? あの湯布院のまちの例を挙げるまでもなく、ある地域を活性化する地元の人達の中心には、必ずと言っていいほど、一度その地域を出て他のまちを知り、何らかの理由で再び帰ってきた人やわざわざそのまちを選んで移り住んできた人がいます。いわば、相対的に評価できるからこそ、そのまちで暮らすことを選択した人達がいます。 誤解の無いように申し添えますが、私は決して宇部以外で暮らすことが必要と言っているわけではありません。要するに、私達のまち宇部の魅力を相対的に評価できる人がより多く住んでいることが宇部の地域づくり、活性化には欠かせない、ということが言いたいのです。異質のソフトを許容できることが必要だと思うのです。このような人を私は、「選択的市民」と呼んでいます。今の宇部にとって、このまちの魅力を相対的に評価することが必要な時代ではないだろうか、と痛切に思えます。 パネリストの一人、田村洋さんの言葉を借りれば、「自分の住んでいるまちの足元の石を宝だと信じて磨き上げる」ためには、多分、その地域を客観的に評価できることが必要なのです。 現在、宇部に住んでいる私達の使命は、広く世界を見て、多くの経験を積むために飛び立とうとしている若者を引き止めるのではなく、むしろ、若者が戻ってこれる魅力あるまちづくりを数十年という長い間隔の中で考え、それを少しでも実現することではないでしょうか。 そして、この情熱と成果を次の世代に引き継ぐことなのではないでしょうか? 1993/05/25 |
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