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野外彫刻、三つの活用法最近、《ふるさと創生金で日本一づくり・実現たった一割強》という新聞のヘッドラインが目に入った。「自ら考え、自ら行う地域づくり」というスローガンで、1988年から89年にかけて日本中を席卷した「ふるさと創生事業」の顛末の一部である。この事業は本来、地域住民自らが各地域内にある固有の資源を再発見、開発、活用するのを支援して内発的な地域づくりを促進しようという試みだった。この点、宇部の「野外彫刻」は固有の資源であり、その作品数は間違いなく日本一、いや世界一であろう。今、その野外彫刻に関する活用法について、二つの意見があるように思える。 第一は、主に、対外的なアピール効果のある、市内に幾つかの《設置拠点》をつくるべきという意見。第二は、主に、市民が親しむべきという視点から、市内全域に配置し、観賞できるようにすべきという意見。 私は、次の理由から、第三の活用法を提案したい。 宇部の財産、固有の資源として市外にアピールする以前に、先ず全ての市民がその素晴らしさを認識、評価し、享受すべきであること。第二は、「現代日本彫刻展」の開催と宇部方式による入手方法が継続されるとすれば、市の所有作品数は増え続け、早晩200点を超すと考えられること。第三は、個々の作品が適当に離れていてこそ作品の魅力が高まること。最後に、これ以上増加すると作品の維持管理は、宇部市だけの手では負えなくなること。 その第三の活用法とは、豊かな市民生活に幅広く役立たせるための《市内各地区への計画的な設置》と市外へのアピール効果を高める《設置拠点の限定》である。 具体的には、「設置拠点」を常盤公園、真締川そして平和通り一帯に限定して、街づくりと共に宇部市の対外的なイメージアップに活用し、観光客等の誘致にも一役かわせること。そして、中学校区ごとに、年次的に配置して、市民、特に若人の各地区への愛着心の醸成を図って、情操教育、文化の開発にも貢献させてはという方法である。 設置にあたっては、具象・抽象彫刻の別、世代別の設置要望、場所等の条件指定のコンペ、各公共施設敷地内への設置などに配慮して、各地区の特徴を出していく。その効果としては、各地区ごとに特色が出て、《我等が地区の彫刻》の維持管理にも自然、熱意と愛情が生じるはずであり、私達の日々の生活の中に彫刻が存在感を高め、各種の催し物の中で日常的に活用され始めることが予想される。そして、いい意味でのタウンアイデンティティの形成も期待されるのではないか。 そのためには、市民生活により近く、より幅広い活用をする観点から、市の公園緑地課以外のセクションも協力して、今ある「彫刻アピール事業」を地区別のグランドデザイン、実施計画に詰める作業をし、早めに私達に提示して欲しいものである。 1993/01/25
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