1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
共創《『冬至夏至』(1996/08/27 「ウベニチ」寄稿文》マイホームは三度新築しなければ満足のいくものができ上がらない、と言われるが、マイホームでもそうなのだから、「海峡メッセ下関」ほどの大規模な公共施設であればなおさらのことである。加えて不特定多数のユーザーを想定する施設であれば、その機能整備は大変に重要で難しいものである。 二百億円を超える施設の建設に携わることが決定した時、私は「どのような施設であれば多くの市民に利用されるのだろうか?」という心配を抱いた。 しかし、その時はすでに実施設計が終っており、明確な理由無しには簡単な設計変更はほとんど不可能な段階であった。最大の課題は、建築設計者の協力が得られるかどうかであった。 一般的に、発注者と建築設計者のCollaboration(共創)は難しい。このことは関係者であれば誰しも多少なりとも経験済みであろう。そして最も不幸なことは、斬新なデザインを持つ建築物が必ずしも利用し易い施設機能を備えていない、ということである。 その原因の多くは、コンセプト・メーキングの過程で、発注者と建築設計者双方の研究と誠意あるディスカッションが不足したことにある。さらに言えば、担当者自身が「自分も市民であり利用者である」という意識を(持っていないのではなく)どこかに置き忘れていること、今流の表現を用いれば、私たち自身に「生活者の視点」が欠けているということを反省しなければならない。 当時は、まず第一にユーザーにとって利用しやすい施設になっているか。次に、特徴ある施設機能を備えているか、そんな姿勢で協議を重ねたが、起工式を迎える段階で発注者側から大小様々な指示が出たことに対する建築設計者側の驚きと反発はおよそ想像に難くない。 事実、色々な形での障害はあった。が、今は「建築設計を任せた相手が良かった」と感謝している。何故なら、我々素人の意見、指摘、疑問を率直かつ真摯に受け止め、考えていただいたからである。通常であれば「予算が無い」、「時間が無い」等の理由で一蹴されたのだろうが、厳しいスケジュールの中、こちらにも納得できる形で対応していただいたことに一同心から感謝している。長い間のディスカッションによって私達も大きな勉強をさせて貰ったし、お互いの財産になったと思う。 お陰で、海峡の都市下関のグレードを引き上げる、シックかつ丁寧で特徴のある施設に仕上がった。「より良いモノを作りたい」という両者共通の想いが、このような発注者と建築設計者との良い関係(Collaboration)を生み出したのだろう。 1996/08/27 |
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