1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
日本文化デザイン会議-1いま地方自治体による様々な施設づくりが盛んである。その目的は産業、文化・芸術、科学技術、スポーツの振興など多種多様かつ多彩であり、建物の形やネーミングがユニークなのに加え、テーマや内容も地域の独自性を発揮した個性豊かなものが多くなっている。これらの中で注目されるのが、“文化の時代”を反映し、競うように建設されている「文化ホール」であろう。従来のどこにでもある総花的な内容から脱皮して、各地域独自の資源を活用した展示方法や体験・利用方法を工夫した特色ある文化・芸術関係施設の建設が多いことに気付く。 一年前に総務庁が行った調査結果によれば、全国の市民会館などのホールは、87年の二千四十四施設から93年の二千四百三十九施設に増加している(日本経済新聞)。実に、全国三千三百の自治体の約7割がホールを所有している勘定になる。 県内でも平成元年以降にオープンした文化施設は、美術館、博物館を含めると三十を数える(中国新聞)。残念ながら我が宇部市には該当施設は無い。 しかし、平均五十億円余りの建設費を投じたこれらの施設の完成後の課題は少なくないようである。特に大きな問題は「利用率の低さ」である。これは、主に設置者側の取り組み姿勢に原因があったように思える。 「文化ホール」は、地域住民の大半が利用する体育館やプールなど一般の公共施設とは若干異なる。「芸術・文化」を希求し、そのための応分の負担を了解している特定の“ユーザー”が存在しなければ継続的な運営が不可能な施設なのである。 このため設置者は、地域の中のニーズ、そのニーズに応える規模や設備機能、オープン後の運営体制、建設資金や運営資金確保のめど、そして妥当な建設投資額など、これら諸々の課題について、その施設を建設する以前に十分な時間をかけて調査検討すべきであろう。しかし、現実は何らかの事情で調査不十分であったり、見通しを見誤ったりしたことが伺われる。 文化庁は人口十万人以上の市が大ホールを建設する際には、申請自治体に対して平均一億円の補助金を出しているようだが、残りの建設費のほとんどが自治省の起債事業を利用した「借金事業」である事を考えれば、地域住民にとっては利用率の低さばかりを嘆いてはいられまい。将来にわたる多額の借金返済のための自治体の財政負担が避けられないのだから。 ボーダーレス化の進展で、「地域間連携」や「広域連携」が求められている時代にあって、利用率の低い同類の施設が、行政の境界を隔てて隣り合せで立っているなどとは笑い話しにもならない。 既に着手している施設は別にして、今後は事前に十分な時間をかけて議論し、地域住民のニーズ調査、基本構想、実施設計に着手することが必要であると思える。 1996/01/05 |
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