1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
まちづくりの指針湯布院町を訪れた前日、日田市に泊った、と書くと、「また、出かけたの?」と言われるかもしれない。確かに最近、東北の盛岡、仙台にはじまって、湘南の三浦半島、九州の湯布院、県内の山口、下関、市内のシンポジウムと随分多彩(?)に触れている。大半は仕事で視察等に出かけたためであるが、その他には休日に気分転換を兼ねて催し物等に出かけている。まず一般的な意味での「好奇心」が強いこと。次に、公私で自分の関わっていることに新しい息吹を吹き込みたいこと。そして、常に世の中の変化や動きに敏感でありたいこと、等が私をそうさせているのであろう。 そんな訳で、今回は日田の感想を述べてみたい。観光シーズンの真っただ中、それも土曜日の午後に町の観光案内センターに「旅館は無いでしょうか?」と訊ねる酔狂も少なかろう、と思いながら聞くと、案の定、温泉付きの旅館など、皆無であった。女房の友人が「日田という処は良いわよ。」と言ったとかで、湯布院に向かう途中でブラリと寄ってみたが後悔した。しかし、今から想えば、翌日の湯布院のあまりの観光地化に幻滅したためだろうか、日田の地道なまちづくりがとても参考になったので、結果的には四苦八苦してビジネスホテルを探して良かったのだろう。 日田の観光振興のキーワードは“天領日田”であろう。幕末の江戸時代にあって「天領日田」は、西国筋郡代の本拠として、九州諸藩に睨みを利かせただけでなく、その資金力(日田金)が諸大名を支え、九州の政治、経済、文化の中心として栄えていた。その栄華を伝え、誇りにしながら観光振興に力を入れているのが素人目にも良く理解できた。中でも、城下町の中心であった豆田町の一角の家並みを保存しながら、観光客向けのまちづくりを行っているのに感心した。その手法は何も日田に限らず、近くは津和野や萩に例があるので、特筆には値しないかもしれない。私が驚いたのは、レストラン、資料館、ブティック、コーヒーショップ、土産物店などの大半が昔からの家をそのまま活用している点であった。住民の理解と協力が不可欠であろう。 以前にも触れたとおり、まちづくりには大きく二つの手法がある。一つは新しい誘致施策の導入であり、もう一つは既存の史跡や伝統を活用する方法である。日田市の場合には、後者の手法に徹底している、いや、徹底せざるを得ないのかもしれない。いずれにしても、まちづくりの方向が明確な点を評価すべきである。 湯布院にしても日田にしても、(賛否はあるにしても)まちづくりの指針が市民に対して一つ明確に提示されているように思える。人口のスケールなどで一概に比較できないことは分かっているものの、やはりこの点が今の宇部に必要な点ではなかろうか。 何を目指してまちづくりを進めるのか、を広く議論し選択する多様な機会が必要である。 1995/11/06 |
|