1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
魅力ある店約20年前、三鷹市から山口市に移り住んだとき、「食文化が乏しいところだな。」と痛感した出来事があった。引っ越して2か月位過ぎた頃に、湯田温泉街の天ぷら屋で家族で食事をしたら、予想も出来ない法外な代金を請求され、驚いた思い出がある。私たちの話し方が地元の人達と違っていたので“観光客”と思われたのであろう。昔から地元の政官界の御用達で繁盛してきたのが原因なのだと思うが、今でも湯田の街は料金が高い割にはサービスは二流、と言われている。他所から来たお客には、さほどの配慮をしなくてもやってこれたのだろう。これが温泉の街湯田の第一印象であった。以後、基本的には変化していない。また、寿司屋でビールのつまみに「ゲソをお願いします。」と注文したら「そんなモノはありません。」と言われて寂しい気持ちになった。食習慣の違いがあったのだろうが、東京を離れて少し感傷的になっていた時期でもあって、そんな些細な出来事で自分の好みの物が食べられない所に移ったのだと妙な実感を覚えた。 その頃には、宇部や山口には“自前で美味しいケーキ屋さん”は一軒くらいしか無かった。甘辛両刀使いの私にはコーヒーとケーキが楽しめない、また特色あるうまい食事が取れないことは、親しい友人から離れたこととも相俟って、勿論、一方では埃がなく静かで環境の良い生活に満足しながらも、「あぁー、地方に帰ってきたんだなぁ。」という実感を強く持ったものである。 それに比べると今、市内のケーキ屋さんの数の多さには驚く。映画を見た帰りにケーキ屋さんに寄った。味の良さも評判であるが、何といっても車で立ち寄りやすいということが原因だろうが、しばしば利用するお店である。 今、宇部市内には山口と同様に十軒程度のケーキ屋さんが営業している。競争が激しいのだろうか、一緒に入った家内と顔を見合わせて苦笑したことがあった。ドアを開けて買い物のすんだ客を送り出す、というサービスや買い物の額によってスタンプサービスがあることなどが、特に、女性客にアピールしているようだ。 切実なサービスの大切さを身に付けないままに繁盛していた宇部の街にも、競争の激化とともに、価格の安さばかりでなく、品揃えから顧客管理まで本来のサービスの重要性を理解した経営が育っていくのは嬉しい気持ちである。 誰にとっても、自分のサイズと好みに合う服、特色のある美味しい食事、絵本から自然科学や社会科学分野に及ぶ幅広い書籍、各ジャンルを代表するコンサートや演劇など、衣食住から文化芸術に至るまで、私たちのニーズが市内だけで充足されれば誰にとっても魅力的な街であろう。しかし、魅力ある店がただ一軒あるだけでは、その街に多くの人は集まらない。個性的で魅力ある多様な店が並んでこそ街に人が集まり、回遊性が生まれる。 ところが、最近では評判が良くなった店が郊外に出ていった例が幾つもあったと聞く。いいお店を評価して利用するのは私達の役目であるが、そんなお店が営業できるような条件を整備するのは行政である。いいお店が街の中で営業を続けられ、そんなお店が数多く並ぶような振興方策を早急に講じて欲しい。 1995/10/07 |
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