1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
杜の都・仙台仙台で友人に会った翌日は土曜日、時間に余裕があったので、半日、中心街を歩き、その北側に位置する県庁舎の最上階に上ってみた。約100万人口を抱える政令都市仙台の昼間の動きには、流石に東北地方随一の中枢都市の活気が感じられ、前夜のあの賑わいとは対照的な一面が見られた。「仙台は“杜(もり)の都”であり、歴史に恵まれた観光資源の豊かな都市でもある。」そう思いついた私は市内観光バスに乗ってみた。1日に3回駅前から運行する一回目の観光バスに乗ってきたのは、中高年者で女性が大半であった。バスによる市内観光「政宗Aコース」は最高額の2千円であるが、人気があるらしく6割のシートは埋められていた。「政宗コース」と銘打っただけに政宗の廟所「瑞鳳殿」に始まって青葉城祉にいたるまで、伊達家に関わる史跡が大半を占めていた。大して珍しくもない史跡めぐりコースの中で、私に最も印象的だったのは移動途中の「定禅寺通り」。真言宗の古刹・定禅寺があったことからこの名があるらしい。東は勾当台公園から西は西公園を結ぶこのまちの中心を貫いている「定禅寺通り」には、二列に整然と植えられた高さ20メートルを超える欅が、夏の強い日差しから下を通る市民を守っているかのような優しくて美しい緑を提供していた。 観光バスの中から漫然と街なみを観ていた私が突然、ハッと目を奪われたのはその欅並木の間に彫刻が設置されており、折りよく女性たちのスケッチグループがその彫刻を取り巻いている光景に出くわした時であった。 土曜日の昼過ぎなので、ごく当り前といえば当り前だが、十数人の女性たちがそれぞれのキャンバスに向かい、悠々とした時間を過ごしている風であった。中に、ベレー帽をかぶった男性が女性たちの間をユックリと歩いていたが、絵画の指導者だろうか。 それを眺めながら私は、「宇部の彫刻もあんな風にごく自然に市民に愛されないものかなぁ。」と想っていたので、この間、時間にしてホンの数分だろうが、私には車中の愛想良いガイド嬢の説明がまったく耳に入っていなかった。 後で聞けば、この「定禅寺通り」に設置されている野外彫刻は三点で、全て人物が題材であるとのことだった。たった三点の彫刻たちは広く、長い欅並木の下で随分恵まれた“生活”をしているものだ。 考えてみれば、高く育った欅の木々の下では市民は憩い、休み、考え、遊ぶ。また、四季折々に樹木が見せる変化に富んだ姿に子供たちは知らず知らずのうちに生命の鼓動を聞き、豊かな情操を身につけ、想い出を作りあげるのだろう。この“杜(もり)の都・仙台”や“仙台の欅並木”は多くの人に知られている。では、“野外彫刻”や“フェニックス”“くすのき”“サルビア”は私たち市民に何を与えているのだろうか。 1995/09/10 |
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