1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
文学館ブームについて最近、国内の各地で「文学館」が急ピッチで増えている。27日付けの日本経済新聞によれば、国内でその数は120にも及ぶとのこと。近くでは、山口市に昨年、「中原中也記念館」がオープンしている。中也の生誕地である山口市内の一角に建設されたこの施設には、現在も全国各地から一日平均二百人の来館者があるという。文化の香りを放つこの施設が観光のメッカである湯田温泉に設置され異彩を放つとともに、この地域の活性化にも一役かっていることが大変にユニークである。聞くところによれば、このような成功を受けて更に隣地を活用した関連施設づくりも検討されているとのことで、これからの拡充が期待される。 話しは変わるが、先日、三隅町立「香月美術館」を訪れた。町と香月画伯のご遺族が協力して建設したこの施設にも来場者が急増しているという。館内に備え付けのサイン帳を拝見したが、香月画伯の遺作見たさに全国各地から三隅町を訪れたファンの声には圧倒された。その一方で、傍にファイルされていた「……三隅町の香月美術館建設は素晴しい取り組みである。これに比して、山口県立美術館には、何故、香月画伯のシベリア・シリーズを全点常設展示できるスペースが準備できなかったのか。……」との立花隆氏の新聞論評が印象に残ったが、これら二つの県内施設はいづれも「地方における芸術文化振興の拠点」建設の成功事例であろう。 だが、国内の施設では色々と問題も発生しているようだ。一般的に「文化施設づくり」では、建物ばかりが立派で肝心のソフト面が未熟であるがために、開館後の運営には四苦八苦している所が多いと聞いている。その原因は、「構想づくり」に十分な時間がかけられず、「施設本来の活動は何か?」が十分に練られなかったことにある。中には開館後の運営を大きく左右する人材の確保や必要な予算措置が忘れられていたという寂しい状況もあるようだ。 ところで、わが宇部には、「(彫刻)美術館」や「演劇ホール」を要望する声がある。その声を行政がなかなか取り上げてくれない、という声も聞く。が、考えようでは、今この時期にこそ、各地の失敗の轍を踏まないように構想づくりや運営手法などのソフト面を十分に練っておくべきではなかろうか、とも思える。この際、先に改築なった渡辺翁記念会館の利用促進も含めて、官民が一緒になって検討したり、隣接する小野田市や阿知須町と“広域連携”できる手法を模索するのも一案ではないか。自由で楽しい議論が期待できるばかりでなく、“中核都市形成”にも何か一役買えそうでもある。 市行政サイドとしても、中長期的な観点からの施設整備の在り方、運営の方法などを勉強しておいて損はなかろう。宇部にとっての必要性や効果、そして真に市民に利用されやすい施設運営、建設資金の調達方法などについて、多角的に時間をかけた十分なリサーチを行っておくことが前述の二施設に勝るとも劣らないソフトを備えた文化施設づくりにつながるのではなかろうか。 1995/07/31 |
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