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「公益的施設の社会開放」『世界の一流アーティストを日本の子供達に』というプログラムがあります。このプログラムは、子供達の五感を通じて本物を感じ、理解してもらうために、特に、文化の背景が異なる「本物の人」を積極的に日本の子供達に紹介しています。21世紀を担う子供達にとって、グローバル・マインドを育てるための国際人育成教育、異文化教育、特にこのプログラムのように具体的、刺激的かつエンターテイメント性を兼ね備えた教育は大きな意義があります。このユニークなプログラムの中で特に目を引くのは、開催場所です。例えば、東京都内のお寺の境内や大学の付属小学校の講堂などを使用しています。このような場所は、それが特定の目的を持っているために、部外者には中々「開放」されないのが我が国の通常ですが、そこで「ジャズ・コンサート」、「ゴスペル・ソング・コンサート」、「人形劇の上演」を行なっています。これまでもカール・ルイスやチコ・ハミルトンを初めとする世界のスーパースターを招聘しています。 このプログラムを中心になって推進している女性は、アメリカでの留学体験とその後の交流を通じて、自ら「日米の文化交流の仲立ちをしたい」という願いのもと、家庭の主婦から一念発起して、関連したビジネスを起業したのです。これまで、様々な国際的イベントの企画運営から国際会議のコーディネーターとして活躍していますが、最近、この彼女がライフワークとして最も力を入れているのが、このプログラムなのです。彼女の情熱と共にアイデアの素晴らしさに感心していました。 随分、前置きが長くなりましたが、実はこの素晴らしいアイデアの一因になっているのではないかという光景に出くわしたので紹介します。 ターロックに滞在中の日曜日の朝、ホストファミリーと一緒に教会に行きました。 (仏教徒のくせに無節操だ、などと言わないで下さい。)実は、その教会のチャペルで午後からピアノ・リサイタルが開かれたのです。参加者はさほど多くはありませんでしたが、教会のチャペルで開催されるということが私には大変に新鮮に感じられたのです。後で地元新聞紙を見ていると、プロ、アマを問わずにこのようなコンサートがウィークデイの夜でも頻繁に開催されていました。少々硬苦しい表現ですが、教会という公益的施設が地域社会の文化芸術の振興のために開放されているのです。 日本では教会に匹敵するのはお寺とか神社ですが、これらの所有する施設が限られた門人や檀家の為以外の集会など、特にコンサートや演劇などに提供される例はあまり知りません。 以前、私はこの欄で、企業の地域社会貢献を取り上げ、企業の所有する施設の社会開放に触れましたが、この度の教会でのコンサートに参加して「(公共的ではない)公益的な施設の地域社会への開放も大事なことだなあ」と思うと共に、ユニークなプログラムを推進している彼女を想いだした次第です。 1994/05/24 |
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