1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
「学園都市」その2突然の休講で午後の時間があいてしまった。親しい友人と三週間ぶりに神田の古本屋街に行くことにした。緑色の「山手線」に乗った。各駅での停車時間が短く、スピードが早いので距離感が異なるのだろうか。考えてみれば毎日随分長い距離を往復している。この時間、通勤、通学ラッシュではないにしても電車内の空席はまばらである。いつの時間帯でも電車で移動している人が多いのには感心する。この何割かの人が宇部線に乗れば赤字にもならないだろうに、と思ってしまう。車内の「中吊り広告」もビッシリと詰まっている。ラッシュの際、車内で立つことを余儀なくされて、否応なく目の前の「中吊り広告」を見ながら出勤する人達に対して大きな宣伝効果があるのだろう。人の集積した都市に相応しい宣伝媒体である。狭い電車のなかで寸暇を惜しむかのように新聞や本を読んでいる人が圧倒的に多いのも特徴だ。総じて活字情報に飢えてたように何かを読んでいる人が多い。何かと刺激的なのが東京である。 昔から有名な神田仁保町の古本屋街に向かって歩いていく。岩波書店の発祥の地や三省堂など現在では有名になっている出版社のビルの谷間を散策しながらだが興味の似通った二人なので歩くのも苦にならない。岩波ホールで「文化講座」が毎月一回開催されているので都合のつく時や興味のある講師の際には参加している。講師には随時、関心のある人物が登場するので有り難い。これも地方では受益できない東京生活の便利さである。 沢山並んでいる古本屋巡りも冷やかし半分で楽しい。和書、洋書、小説、学術書などの品揃えに各書店がそれぞれの特徴を発揮するのに腐心しているのに興味をそそられる。 陳列されている書籍の装幀が時代の移り変わりを如実に物語っている。これを見るだけでも実に楽しいものである。 東京の喫茶店のコーヒー代は宇部に比べて決して高くない。お客の数が多いせいだろうか。でも店の雰囲気、内装などの作り、店員のサービスは宇部の比ではない。「この点からすれば東京のコーヒーは安い、ということになるのかもしれないな」友人と勝手な評論をしながらしばらく時間を過ごした。 夕方近くになって、アルバイトの家庭教師に行く時間になった。二人は別々の電車に分かれる。彼の自宅は市川で、これから自宅まで一時間は電車に乗って帰ると言っている。「いつも大変だな」と声をかけるが、彼は「別に」と答えて電車に吸い込まれていった。そういえば、毎日通学しているクラスメートの自宅の所在地を聞いてみると東京圏の広さが分かる。東は千葉、西は三多摩、南は横浜からそれぞれ一時間半以上かけて通学している。半径50〜60キロ範囲は当然のことながら通勤、通学圏内なのである。 「そうだ、明男君は来週から期末試験だ。じゃ、今晩は熱が入っているだろうな。」そう思いながら私鉄への乗り換え駅を確認して朱色の中央線に乗り込んだ。 1994/03/14 |
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