1. 三つのルール 2. 野外彫刻、三つの活用法 3. 三つの「ウェア」 4. 文化を育む三つの「C」 5. 三つの期待 6. 三つの懸念 7. 三人の地域リーダー 8. 優れた企業、三つの条件 10. 三種の神器と三上の訓 11. 三人のトラバーユ 12. 深夜の国際電話 13. 選択的市民のすすめ 14. 明快少年出現! 15. ふるさと人材育成事業報告 16. 魅力あるまちづくりとは? 17. アメリカの常識、日本の非常識 18. 女性のバス運転手 19. たかがチップ されどチップ 20. ボーダレス時代の新市長に望むこと |
研究者の環境その1またまた、デービス市視察の報告に戻ります。カルフォルニア大学デービス校を訪れて感じたのは、キャンパスの広さと緑に囲まれた景観の美しさ、そして研究環境の厳しさでした。 数年前、鳥取から転職された昆虫学部の前田進教授に幸運にもお会いでき、研究環境や大学と市との関係についてお話しをうかがうことができました。 彼は年令が40歳くらいでしょうか、永年、サソリの毒などの遺伝子を導入した組み替えウィルスによる害虫防除の研究者です。 まず、研究者の待遇について聞きました。 大学教官の採用に当たって、性別、年令は不問とのことです。定年もありません。アメリカの合理主義を鮮やかに反映しています。 教授級である彼の年報酬は約5百万円。同大学の総長が約8百万円、ブッシュ政権のスピッツ報道官が約7百万円ですから、相対的には低い額とは言えません。 報酬は毎年約50万円程度アップできますが、昇給には自分で書類を作り申請しなければなりません。そして学生が評価、判断して、その結果昇給が可能となります。 彼は、学外から年間約3千万円程度の研究費(グラント)を導入しています。この研究費は当然、本人の生活費ではなく、スタッフを雇い研究を維持するために必要な訳です。「ただし、自分が獲得する研究費の43%を経営陣に上前を跳ねられている」とも語っています。 でも、彼は努力研究した結果が論文等を通じて学外の評価につながり、多額の研究費の獲得が可能となるアメリカのシステムに満足している様子でした。 当然ながら大学の経営陣は、学外から多額の研究費を導入できる(つまり「43%」を生みだせる)優秀な研究者を優遇します。極論すれば、給料の高さではなく研究費の多寡で研究者の評価が決まります。この点、研究者にとって大学は一般企業並みの厳しい競争社会でもあると痛感した次第です。我が国ではいかがでしょうか? 誤解を恐れずに敢えて比喩を用いれば、大学の経営陣は芸能プロダクションの経営者、大学の研究者はその所属タレントである、ということです。但し、芸能プロとの違いは、大学の経営陣は、この「43%」を図書館のデータベース構築、パソ・コン等の目を見張る程の教育・研究環境の基盤整備充実のために投資している点でしょう。 次に、地域と大学との関係で見ると両者の結び付きは強いとの印象を受けました。 彼の隣室が『昆虫の博物館』として地域に開放されていましたし、勿論、図書館は一般市民に開放されています。さらに、社会人教育や再入学も盛ん、とのことでした。 一方、市からの研究助成金はわずか約2百万円と予想よりもはるかに低額でした。 最後に、前田さんが「日本では研究がやり辛いし、自分の研究が日本では正当に評価されないので、日本には帰りたくない」と語っていたのが、印象的で少し考えさせられました。 1993/08/24 |
|