中心商店街の活性化について(1994/11/13 宇部市長への提案)前略 藤田市長殿先般、ウベニチの「冬至夏至」に『中心街地区の活性化についての私案』を寄稿しましたのでその概要をお送りします。 なお、トーク・ウベ21の中には、私案とは別の案を考えているメンバーもいます。 トーク・ウベ21 河野哲男 『中心街地区の活性化について』 1 はじめに これまで商店街、特にそのソフト面での工夫について勝手な(?)意見を述べてきました。そこで今回のシリーズの最後に、「中心街区の再開発試案」とでもいう私案を提案してみます。勿論、資金、制度、権限等の様々な問題が横たわっているのは承知の上です。市街地に関する現在の問題を思いつくままに挙げてみますと、⑴「商業環境」とでも言うべき全国共通の状況のもと、中心商店街の再活性化が求められていること。⑵市役所はその手狭さ、老朽化から建替えを検討する必要があること。⑶他地域から進出する大規模郊外店との競争力を保つためにも、商店街周辺に大規模な駐車場が求められていること。⑷宇部においてもご他聞に漏れず、定住人口の減少が少しづづ進行しつつあり、商店街周辺の中心街区において「にぎわい」が喪失されつつあること。⑸大学生や勤労青年達、いわゆる「若者」にとって彼等が集まれるようなお洒落な場所がない(と言われている)こと。⑹他地域から宇部を訪れる人、特に自家用車や山口宇部空港を利用する人にとって、常盤公園や中心街区へのアクセスが判りにくいこと、などなど。 私は、このような状況を勘案して、その解決のためのヒントにでもなればと思って提案したいと思います。 2 既成の概念から離れて 「所変われば品変わる」という言葉があります。世界は広く色々な発想があり、様々な風習があり、そして多種多様な生活、慣習があります。私たちも従来の発想の「呪縛」から離れ、発想の転換も時には必要でしょう。 以前、JR駅の構内に美術館(ギャラリー)設置の提案をしたことがあります。と言っても、これは何も私が初めて提案することではなく、欧米や国内で既に存在していることです。欧米の駅の建物の中には、切符の販売や待合室など鉄道の乗り降りに必要な業務を行うための施設機能ばかりでなく、忙しい勤務生活を余儀なくされ、時間的余裕の無い通勤者に便利な施設が併設されていることが、ごく当り前のことなのですから。 考えて見れば、日本でも古くは「宿場町」や「門前町」がありましたし、最近の「立食いのうどん屋」や「たばこ売り場」等もこの様な発想の延長線上でしょう。また、最近各地で見られる複合的な駅ビル開発も同様の発想と言えるでしょう。土地代の高騰してきた日本では便利さに加えて、土地の有効活用という苦肉の策でもあった訳です。 ついでながら、欧米の駅の広場(コンコース)や教会の中庭では、昼休みの時間を利用して、市民のブラスバンドや弦楽器による合奏などの演奏会が開催されているのを何度も観たことがあります。公共の場を市民がごく自然発生的に利用している風景として私には大変に印象的でした。 3 再開発私案 市内の中心地域に求心力を回復させる抜本的な策として、「市街地の再開発」私案を簡単に述べます。 国道190号線真締川東側沿いに⑴常盤公園、山口宇部空港、市街地を結んだシャトルバス・センター、⑵中心商店街からの移転入居による新たなショッピング・センター、⑶立て替え(移転)される市役所、⑷老朽化のために立て替えの必要が生じる市営住宅などの施設が入居できるデザインの斬新さを備えた「高層ビル」を建設することです。そして再開発により生じる周辺余剰地は大規模駐車場に充てられます。 さて、具体的には、仮にこのビルを15階程度に高層化することとします。低層部、特に1階には、市民の利用のし易さを確保する観点から、市役所の市民部のような市民生活に直結した組織と窓口、そして金融機関、郵便局等の利便施設が入るのでしょうか。2、3階には、ショッピング・センターを中心として、美術館(小さなギャラリー)、映画館・演劇ホール、そしてカルチャー・センター等が入ります。余韻を楽しむためにお茶を飲む場も必要でしょう。そして4階には、市民、行政の両方が利用できる大小の会議室が備わっています。中層部の5階から10階は市役所のオフィスとなります。次に、高層部の11階から14階には住居部分が、そして最上階の15階には、夜は宇部港や九州の景色が眺望できるレストラン&バーが入ります。お洒落な雰囲気が醸し出せる店が揃うことが必要でしょう。条件次第では、都市型ホテルがあってもいいではありませんか。敷地面積等に制約があれば、ビルはツインタワーとしても良いのではないでしょうか。きっとこのビルは宇部市の「ランドマーク」となる筈です。 この提案の特徴は、⑴市内商店街各個店の移転・統配合による商業機能の集積、⑵行政庁舎の建て替(移転)による市民への行政サービスの向上、⑶中心部における大規模駐車場の確保、そして⑷ショッピング・センターや文化、娯楽施設の集積による「若者が集える場や賑わいの創出」、⑸交通体系の改善、そして⑹公共住宅施設の改良による市民生活の質的向上などを前提としていることです。 でも、これらの施設や機関を核とした利便施設機能の集積を同時に計画するという非現実的な提案かもしれませんね。しかし、これによって市内の現存の各施設が「本来の目的を果たすだけの施設、通過するだけの建物」から「市の施設と商店街が一体化したコミュニティーセンター」へ変貌を遂げ、街の“ヘソ”や“まちづくりの拠点”が形成される可能性があると思います。したがって、「高層ビル」を一棟に限定するとは限りません。複数のタワーになってもいいのではありませんか。どの程度の施設が集まるか、規模がどの程度になるかによって、川を挟んだツインタワーにする必要が生じるかもしれませんが、これもまたいいでしょう。その程度の広さはあるはずです。 この計画の狙いを簡単に表現すれば、「各種施設・機能の集積」による「複合的利便性の向上」と「相乗効果の発揮」です。投資効率の良さと消費需要の拡大が期待されます。 4 詳述 各種の主要施設を一体化した「高層ビル」の建設による、商業、住宅、行政、交通、遊創機能の集積を提案しました。少し詳しく説明させて下さい。まず、前面にバスセンターを抱える「高層ビル」1階の最も便利な場所には、所得証明、住民登録、印鑑証明などの市民の日常生活に直結した市役所の窓口諸機能が集中されます。また2、3階には、市内の個店の移転誘致も勧めて、衣食住に関する特色あるショッピングセンターや市民の知的活動拠点となる文化センター、ミュージカルや演劇も出来る映画館、私的展示会もできる美術館(ギャラリー)等が入居します。これらの施設は全て小規模が適当でしょう。その他には、簡単な医療施設や金融機関、郵便局も必要です。駐車場は周囲に確保されています。ビルの総合管理は民間ですが、管理方法については検討が必要です。そして、「高層ビル」は決してありふれた形にせず、最近の消費者の指向水準を考えて、アメニティー溢れる『広場(パティオ)』を配置したり、真締川が眺望できるデザインにします。この際、真締川も二層化してリバーフロント景観の向上を図ります。県内には見られないこの「先進性溢れる高層ビル」そのものが特徴あるデザインとして高い評価を得て、他地域からの視察等の対象になります。このビルそのものが「ショーケース」となり、優れた建築家設計の建物として「全国ブランドの情報発信」をして、建築後2〜3年は視察者が絶えません。このビルに入居している物販の個店等には大きな波及効果が生じます。 そして、人やモノの集積によって、消費・サービス需要や雇用の創出、税収の増加などが考えられます。次に複合効果としては、市役所の各種会議需要、商店街や各種利便施設からのイベント企画需要、入居する勤労者の消費需要、シャトルバス昇降客の消費需要等が想定されます。この結果、料理飲食業、土産・記念品製造・販売業、展示・装飾・デザイン業、企画・広告業、出版・印刷業、金融・保険業、旅行業、運輸業、ホテル・旅館、人材派遣業等のサービス業等の関連企業への波及や新たな進出とこれに伴う新たな雇用の創出も期待されます。「高層ビル」の建設によって、地場産業の振興、地域文化の向上、地域意識の向上、街づくりの推進、文化活動の充実等が促進され、結果的には「地域振興の促進」という大きな相乗効果を生むこととなるでしょう。 でも、良い話ばかりではありません。課題としては、建設費用の調達があります。しかし、考えてみれば市の庁舎、市営住宅は遅かれ早かれ、それぞれの建設資金を調達して建設しなければならず、何もこの度必要になるわけではありません。むしろ、この際共同事業として建設すれば、両者ともに用地費や建設費ではメリットが生じ、宇部地域での公共投資効果も発生します。問題はその他の民間施設です。区分所有か、賃貸借か、はたまた運営管理は誰が行うのか、を考えなければなりません。しかし、総合的には地域全体の利益になると思われます。 私の「中心街区の再開発試案」は、「絵空事」の部分が多いことは承知しています。しかし、いま、何が可能で何が不可能なのか、を現実的に検討する時期が来ているように思えます。 1994/11/13 宇部市長への提案 写真はクリックで拡大します。 |
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